51話

悠久ノ風 第51話

51話 


葉月が
エリミナが
ラムが。
アゲハが
アリサが
タマノが
メーリンが
巫女が、くノ一達が絶望に追い詰められる。

風守の女達が倒れ伏し、絶望する。

「あぁっ……」

絶望に染め上げられる。

勝てない。
負ける。
殺される

絶対的な絶望の群れに、守護者達は絶望する。

ひっ……!?

今この時も日本中に絶望が覆っている魔軍行。

――今までの絶望とは違う。
――光の全てを否定する絶望が日本中に顕現している。

日本中に顕現する地獄、地獄、地獄。

「さぁ見ろ、この地獄を」
「日本人が苦しみ死にゆくさまを!」

「さぁ魂に焼き付けるのです! この地獄を」

「自分達がやってきた事は全て無駄だったと!」

「お前達の生命は無駄だったと」
「耐え忍び、日本に奉仕した事は無駄だった」

「お前達のやってきた事に意味もなかったと」

「あっ、あっ……あっ……」

絶望が心を犯し尽くす。

「あっああああぁぁぁぁぁ!!」
「うっうぅぅっう」

限界だった。
風守の女達が絶望を吐き出した

「ギャハハハハハハハハ」
「美味だ美味だ実に美味だあああぁぁぁ」
「風守の女の絶望! この数が絞り出す絶望は未知だったが……想像以上だああぁぁ」
「ここまで生かした甲斐があるというものぉぉぉ! いいぞおおぉぉ実によいいいいいいいい!!!」

そして――

「ぎゃああああ」
「ぐううぅぅ」
「んおおおぉっ!?」

くノ一達の叫びが響く。

殴られ、玩弄され、蹂躙される風守の守護者達。

「あっ、あっ、あっ…………」

絶望が広がっている。

早綾が
葉月が
アゲハが
タマノが
エリミナが
風守のくノ一が
風守の巫女達が

遍く全てが絶望する。

死を上回る絶望が覆い尽くす。
希望は死んだ。
天に映る一億総殺。虐殺の光景。
ここに希望はどこにもない。

誰もが絶望する。

だがその時――

「なに!!」

「なんだ!?」

「こ、これは!?」

「!?」

その時だった。

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――国敵討滅。

風が吹く。

――国敵討滅

瞬間――蒼生守護の風が駆けた。

蒼風が魔物を薙ぎ払う。
弾け飛び散る魔の血。

蒼い風が絶望を滅ぼした。

「あっ……」

「えっ……」

「うぅっ……」

「あん… た……」

「うそだろ……おいっつ……」

風が吹く。
人を守るように蒼の風が湧出していく。

――風だった。

唸り狂う蒼風が嵐となり魔物を一斉に薙ぎ払ったのだ。

「あっ……」

苦しい時に
悲しい時に
助けが欲しいその時に。
人を救う神ノ風。

 

――蒼生守護

――それはまるで
――日本を救う
――神ノ風。