破壊光

悠久ノ風 第2話 エクストラ

第2話 破壊光

 

――そこは極限の緊張にあった。

防衛の前線。目の前に広がる海の彼方には魔大国ガルディゲン。

張り詰めた空気。彼方からくる死の匂い。
見張りの兵は緊迫していた。
“今国ハ存亡ノ危機ニアリ全力ヲ以テ事ニアタルベシ”
国世院――政治の最高機関からの通達だ。

大陸の魔大国ガルディゲンの動きはとっくに一線を越えていた。
領海侵犯領空侵犯に始まり、魔族の襲撃魔物の台頭など
ガルディゲンから日本への侵略は昔から行われていた。

だが日本に向けてガルディゲンが狂神クラスの魔族――大量破壊兵器を放つという
情報が政府から入っている。
狂神クラスの魔族の来襲は万を超える日本の民の死を意味している。
つまりは戦争最前線。
そして、それにあわせて神国リュシオンまで動いているという噂
もたっている。
(それも最悪な形でだ)
噂が本当なら既に有事というレベルではない。
完全な敗北既に詰み。なにをどうやっても日本という国は――
(滅びるだろう)
だがそれでも職務を放棄するわけにはいかない。
その時――

「なんだあれはッ!?」

光りの柱が屹立する。
空が震える。瞬間――

――ドオオオォォ

天空に明滅する極大光。
発生源は海の彼方――
「ガルディゲンっ!?」
防衛隊の人間は確信する。

政府から出された発令、それ以上に魔大国ガルディゲンの力と
暴性を考えれば当然だった。

発生源は彼方のはずなのに、脅威が明確に見える理解できる。
それは光の規模が度外れている事に他ならない。

(なんだ、これは……)
前線を統括する警備隊長は息を飲んだ。明滅する光り。
その光の先に恐ろしい力を感じた。

(巨大な力の反応が……一、二、三……)
今だ彼方で明滅する巨大光。そしてその先にある力の波動に防衛隊長は息を飲んだ。
(馬鹿な……AA神理者に匹敵する規模の力が、こんなに……)

空は明滅を続ける。
巨大な力の波動。
それは前線に身を置く者にとっても心胆が凍るような恐怖的暴力の波濤だった。

地と空が――震える。

「伏せろおおおおぉぉぉぉっ!!」

瞬間、凄まじい衝撃が隊員達を襲った。


「ぐあああぁぁっ!?」
「あがああぁぁっ」

極大の衝撃が襲い、断末魔が響く。

人間が滅裂し、鉄の建物が砂の城のようにあっけなく崩れ落ちる。
隊長はそのあまりの破壊現象に心から恐怖した。
(放たれたのか……ガルディゲンの……奴らが)。
衝撃だけでこれだ。
これが来襲したらどれほどの災禍がもたらせるのか、考えただけで
恐ろしい。
衝撃波に幾人もの隊員が薙ぎ倒される。
おぞましい破壊が迫る。
彼方の光りはその事実をいやがおうにも理解させる。

それは彼方よりの破壊者
まるで隣国から自国へ、大量破壊兵器が放たれたかのような
衝撃と不吉さ。

――いや事実なのだ。

放たれるのだ日本の人間を殺し尽くす――大量破壊兵器が。